Lab 09 — Chemical Kinetics
速度論支配と熱力学支配
反応物 A から2つの生成物への道があります。B への道は山(活性化エネルギー)が低いかわり谷が浅く、C への道は山が高いかわり谷が深い。画面では 240 個の粒子が、熱ゆらぎに揺すられながらこの地形を転がります(ランジュバン動力学)。低温では、越えられるのは低い山だけなので B に溜まります — 速さが勝負を決める「速度論支配」。高温では両方の山を自由に行き来できるようになり、最後は深い谷 C がボルツマン分布で勝ちます — 安定さが勝負を決める「熱力学支配」。
低温で B に溜めてから、温度を上げて C への逆転を見る
具体例:1,3-ブタジエン(CH₂=CH–CH=CH₂)に臭化水素 HBr を1分子付加させると、2つの生成物ができます。B は 1,2-付加体(3-ブロモ-1-ブテン)。低い山を越えて速くできる、速度論的生成物です。C は 1,4-付加体(1-ブロモ-2-ブテン)。二重結合が鎖の内側にあるぶん安定な、熱力学的生成物です。−80 ℃ では約 80 : 20 で B が優勢(速さが勝つ)、+40 ℃ では逆転して約 15 : 85 で C が優勢(安定さが勝つ)。ダイヤモンドが黒鉛より不安定なのに室温で事実上永遠に持つのも、変換の山が高すぎる速度論支配です。「どちらが安定か」と「どちらが速いか」は別の問い、というのがこのページの全部です。