Lab 13 — Nuclear Physics
核融合とクーロン障壁
2つの軽い原子核は、短距離で働く強い力が引き合わせてくれる前に、まずクーロン力で反発し合います。画面の火山のような山がその反発の壁 — クーロン障壁 V(r) = 1.44·Z₁Z₂/r MeV — で、2つの核は左右からこの山を登っていきます。古典力学では、頂上を越えるだけの運動エネルギーがなければ融合できません。しかし量子力学は違います。トンネル効果のページと同じ理屈で、ガモフ因子 P = exp(−√(E_G/E)) の確率なら、届かないはずの高さでも壁をすり抜けられるのです。反応を選び、温度(=運動エネルギー)を上げてみてください。まれなトンネル成功が、やがて障壁を悠々と越える古典的な衝突に置き換わっていきます。
T を上げるとトンネル成功が増え、さらに上げると古典的に障壁を越える(p–p は越えてもほぼ融合しない — 弱い力がボトルネック)
D–T 融合はわずか 0.018884 u(陽子1個の質量の約2%)を、E = Δm·c² = Δm × 931.494 MeV/u によって 17.59 MeV に変えます。核子あたりの結合エネルギーは ⁵⁶Fe / ⁶²Ni 付近(約8.8 MeV/核子)でピークになり、軽い核は融合で、重い核は分裂で、その山頂に向かうことでエネルギーを放出します — 核融合と核分裂は、同じ1本の曲線を両端から読んでいるだけです。燃料は水(重水素)とリチウムから作れるほど豊富で、灰はヘリウム。核分裂のような長寿命の高レベル廃棄物は残りません(中性子が炉壁を放射化する課題は残ります)。難しいのはクーロン障壁と「閉じ込め」です。ITER のようなトカマクは D–T 反応を約1億5000万ケルビン、10–20 keV で狙います。一方、太陽の中心はずっと「冷たい」1.3 keV(1.5×10⁷ K)。そこでは1個の陽子が p–p 反応を起こすまで、平均で数十億年も待ちます。トンネル効果だけならここまで稀にはなりません。最初の一歩 p + p → d + e⁺ + ν が弱い力を介するため、桁違いに遅くなるのです(このページの p–p は、4個の陽子が ⁴He になる連鎖全体をひとつにまとめて描いています)。だからこそ水素爆弾は p–p ではなく、速い D–T を使います。同じ「水素の核融合」でも、太陽と爆弾では走らせている反応が違うのです。