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結晶と回折 — 逆空間の世界

結晶に X線や電子線を当てると、スクリーンにブラッグ斑点が並んだ回折パターンが現れます。その正体は結晶の電子密度の2次元フーリエ変換 — 検出器が測るのはその強度 |F(q)|²。左が実空間の結晶、右がその回折像です。フーリエ変換は回転と可換なので、結晶を回すと回折像も同じだけ回ります。格子間隔 d を広げると、斑点は逆に狭まる(これが「逆空間」)。

F(q)=jfjeiqrjI(q)=F(q)22dsinθ=nλF(\mathbf{q})=\sum_j f_j\,e^{\,i\,\mathbf{q}\cdot\mathbf{r}_j}\qquad I(\mathbf{q})=\bigl|F(\mathbf{q})\bigr|^2\qquad 2d\sin\theta = n\lambda

格子(正方/六方)と基底を変えると斑点の並びが変わる。「2原子」にすると構造因子の系統的消滅で斑点が間引かれる。「位相を捨てる」で位相問題も体感できる

格子
基底(モチーフ)
位相

実空間の間隔

X線結晶構造解析はこの逆問題です — 回折強度 |F|² を測り、フーリエ変換で電子密度(=原子配置)へ戻す。ただし測れるのは強度だけで位相が失われる(位相問題)。位相なしで逆変換しても、原子の「像」ではなく原子間ベクトルの地図=自己相関(パターソン関数)しか得られません。実務では重原子法・分子置換・直接法などで位相を復元します。同じ逆空間の発想は電子回折や MRI(k空間)にも共通。DNA の二重らせんも、フランクリンの回折写真「Photo 51」の斑点配置から読み解かれました。