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光学異性体と、薬が効く理由

4つの異なる基が結びついた炭素は、右手と左手のように「重ね合わせられない鏡像」を2つ持ちます — これが光学異性体(エナンチオマー)です。体内のタンパク質(受容体・酵素)はそれ自身が左右非対称なので、片方の異性体だけがポケットにぴったりはまり、薬として働きます。もう片方は同じ原子で出来ているのに、はまらない、あるいは別の作用をする。分子の「かたち」と「手性(右手か左手か)」が効き目を決めているのです。

受容体+R3/3 接触結合(活性)受容体+S<3 接触不適合(不活性)\begin{aligned}\text{受容体} + R &\longrightarrow 3/3\ \text{接触} \longrightarrow \text{結合(活性)} \\ \text{受容体} + S &\longrightarrow {<}\,3\ \text{接触} \longrightarrow \text{不適合(不活性)}\end{aligned}

R体は3点すべてが合ってはまる。S体(鏡像)に切り替えると色が合わず、はまらない

結果結合 ✓ 活性

3点相互作用モデル:受容体の3つの結合点に、薬の3つの基がすべて合ってはじめて結合します。鏡像体はどう平面内で回しても手性が逆なので、全部を同時に合わせられません。悲劇的な実例がサリドマイド — 一方の異性体は鎮静薬、もう一方は催奇性を持ちました(しかも体内で相互変換するため片方だけの投与でも防げなかった)。だから現代の医薬品開発では「片方の異性体だけを作る(不斉合成)」ことが決定的に重要です。アミノ酸がほぼすべて L 体、糖が D 体なのも、生命が最初に選んだ手性の名残です。